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「虚 飾」

虹のメタルカラーにつつまれた塔。
風が吹くたびにその表面のペンキは剥がれ落ち、
ところどころに黒い地肌を見せている。
塔の下ではヘルメットをかぶった男たちが
汗を流しながらシャベルで何かを掘っている。
一人の男がすすだらけの顔でにやりと笑い、
分厚いゴムの手袋を脱いで指先を見せた。
指先には鉄のかけらが刺さっている。
「これはスケールと言う物だ。このシステムが稼動するとできるゴミだ。」
男はそう言うと指先のスケールを抜いた。
指先からはじわっと血がにじみ出た。
男はその血を舐めて言った。
「こいつがたまるとこのシステムはまひしてしまう。」

彼らが支える虚飾の塔は、
今日もスケールの山を築き、
男達がそれを崩す。
この地は何年このことを繰り返してきたのだろう。
失うものが無いように振舞う男たち。
しかし彼らは失った何かを取り戻すため、
そしてこれ以上なにかを失わないため、
汗を流し、スケールを掘り続ける。